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今日は個別株投資についてです。私は約10年にわたり資本市場関連業務を担当していますし、それ以外でも企業調査なども担当していた時期があるので、友人や知り合いの方からは、「最近株下がってるし買い時かと思うんだけど、どこの会社の株買ったらいいかな?」と相談を受けることが良くあります。
私自身、企業の中期経営計画やアナリストレポート、有価証券報告書等をきめ細かくチェックして、その企業の業界内でのポジショニングなどを整理し、「中長期的に儲かるビジネスモデルを構築出来ているか」という観点から企業分析をするのは大好きです。特に、企業分析においては、経営学の権威であるマイケル・ポーター氏の「競争の戦略」、即ち「5 Forces」に基づく業界の構造分析をしてみると、業界内での競争状況やサプライチェーンにおいてどのように利益が流れているかを把握することができますし、こういう分析アプローチが基本的には大好きです(5 Forcesが万能と言っているわけではありません)。
ちょっと横道にそれましたが…、言いたいのは、「個別株を買うのであればそれくらい自分で分析するノウハウと時間があるか」ということです。私は投資会社に勤務しており個人的な個別株への投資には一定の制限があるので全く個別株は持っていませんが、自分の嗜好や感覚に基づきタイミングを見て個別株を買うのは全くオススメしません。無論、当たれば大きくリターンを生む可能性がある反面、銘柄分散効果や積み立てによる時間分散効果が全く得られないからです。要は、前回お話したとおりバクチに近い、ということです。
もしそれでも個別株を買いたいのであれば、少なくとも10銘柄程度に分散して投資することをオススメします。なぜなら、最低このくらいに分けて投資すれば銘柄分散効果が得られるからです。ポートフォリオとしての標準偏差(価格変動の大きさ/リスク)がかなり下がります。無論、同じ業界や近接した業界内のみで10銘柄ではダメです。食品・インフラ・医薬品といったいわゆるディフェンシブといわれる業界から、景気感応度の高い業界まで幅広く銘柄を入れた方がいいかもしれません。また、当然ながらワンタイムで纏めて購入、というのもダメです。やるなら10銘柄を毎月一定額積み立てで購入する必要があると思います。
どうでしょうか。結局こうなってくると、各銘柄の動きは気になりますし、自分でこのようにポートフォリオを作るのは結構面倒だと思います。なので、やはり投資信託を購入するのが圧倒的に楽なのです。そもそも昨今のマーケットにおいては、「長期的にみてアクティブファンドのリターンはパッシブファンドを上回ることは難しい」ということが言われています。アクティブファンドは投資のプロであるファンドマネージャーが個別株を徹底的に調査しますのでお金がかかりますから、大体、購入時に3%、毎年の信託報酬も1%超かかりますので、そのようなコストを差し引いてもなお、市場全体に連動するパッシブファンドのリターンを長い目で上回ることは難しい、というのは当然といえば当然の帰結なのです。もちろんこれは一般的な話であり、市場全体をアウトパフォームしている優良投信は何本も存在しますが。。。
長くなってきましたのでこの辺りにしたいと思いますが、要すれば、①銘柄分散効果、②時間分散効果、③コスト・手間・時間、これらを総合的に考えれば、「長期的に成長が見込める市場全体にコツコツ投資する」、これが鉄板の投資手法である点はご理解いただけたかと思います。ですので、一言でいうと、コストの最も安い「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」を毎月積み立てして買いましょう、ということになるわけです。。。それ以外は趣味の範囲で、例えば「ロボット」だとか「バイオ」だとかテーマ性のあるアクティブファンドを買ったりするのは問題ないと思います。ただ、それが資産運用の中心になってはダメですよ、ということでしょうか。
以上、お付き合いいただき有難うございましたm(__)m